私の愛したSF(15) 「人間以上」

「分解された男」に続いて1953年シリーズ。マイベストを選ぶときには絶対にはずせない、シオドア・スタージョン「人間以上」を。

”異色”とか”奇才”という言葉がこれほど似合う人もそう居無いシオドア・スタージョン、その独特の作風は決して万人受けするものでは無いが、噛み合う読者にとっては唯一無二の存在になりうる妖しい魅力(魔力?)に満ちている。ちなみに同じようなことをカート・ヴォネガットについても書いたけれど、ヴォネガットが生み出した架空のSF作家キルゴア・トラウトは明らかにシオドア・スタージョンのもじりである。(トラウト→鱒、スタージョン→チョウザメ)彼もきっとファンなのだろう。

「人間以上」はスタージョンが作家として最も油の乗っていた時期に書かれた彼の代表的長編であり、第1回ヒューゴー賞こそ逃したものの、翌年の国際幻想文学大賞を受賞している。(ちなみにこのあまりなじみの無い賞、1951年からたった7年しか続かなかったがトールキンの「指輪物語」なども受賞作である)

賞ということでいえば、彼の名を冠したシオドア・スタージョン記念賞というのもあってこちらは1987年より開催、ここで最初に紹介したテッド・チャン「あなたの人生の物語」も受賞している。

さて、肝心の内容だが、一言で言えばホモ・ゲシュタルト(集団人)を題材にしたミュータントSFである。ホモ・ゲシュタルトという概念を最初に考え出したのが誰なのか僕は知らないけれど、少なくともSF界ではスタージョンのこの作品が他に与えた影響は計り知れない。

小学生の頃、子供向けのSFを読み漁っていた中にもホモ・ゲシュタルトを扱った作品があって、もうタイトルも覚えていないのだが、それぞれ超知性(頭)、テレキネシス(手)、テレポーテーション(足)、それらを統合するテレパシー(身体)、といった超能力を持つ少年少女達が全体として1人の超人(=人間以上)を構成する、という設定がすごく面白くて、その後「人間以上」を読んだときに、ああ、コレだ!と感動したことを思い出す。

僕が読んだその作品は子供向けということもあり、単純なスーパーマンの冒険活劇になっていたように記憶しているが、「人間以上」はもちろんそんな簡単な内容では無い。”愛”や”孤独”をテーマとし、奇想幻想を手品のように操って紡ぎ出されるストーリーはスタージョンズ・イリュージョンとでも呼ぶべきもので、その手腕があまりにも見事過ぎるので、一度読んだだけでは普通の読者には自分が今何を見せられたのかがわからない。わからないけれど何か凄いものを見た、ということだけははっきりしていて、結局また最初からページを繰ることになる。そうやって僕も何度となく読んだ。

Amazon のカスタマーレビューで同じことを書いている人がいるけれど、本当に読むたびに新たな発見があって、たぶん僕も一生読むんじゃないかな…と思う作品。特に読書好きを自認する人で未読の方にはぜひ薦めたい。傑作です。

「人間以上」 シオドア・スタージョン(米) 1953
魔法のキャビア ★★★★★

人間以上
人間以上
posted with amazlet on 07.01.26
シオドア・スタージョン 矢野 徹
早川書房
売り上げランキング: 21067

[PR]
by k_g_zamuza | 2005-11-18 19:47 | SF的生活


<< 私の愛したSF(16) 「幼年... 私の愛したSF(14) 「分解... >>