Book to Film (1) 「スタンド・バイ・ミー」

2007年の新カテゴリは「Book to Film」。内容はタイトルどおり、原作小説とその映画化作品の両方をとりあげて、ダラダラと感想を書いてみようかなと思っています。映画をこき下ろして原作を持ち上げるだけの内容にはならないように、細心の注意を払いつつ。

ともあれ、最初の1作目は「スタンド・バイ・ミー」です。

***

長い間スティーブン・キングを無視し続けてきた。そもそもホラー小説があまり好きではなかった。高校生の頃、友人が読んでいたディーン・クーンツを借りたときも(たしか「インテンシティ」だったと思う)まったく響かなくて、モダンホラーとはこんなにつまらないものかと思った。

その後、ちょっとした内輪のパーティの余興で、キング原作の「ペット・セメタリー」を観る機会があった。いかにもB級ホラー、というチープな雰囲気が可笑しくてくすくす笑いながら観た。(ただし1人だけ怖がって泣いた女の子がいた)同じ頃にたまたまNHKで放映された「ランゴリアーズ」のお粗末なCGも良くなかった。読む前から僕の中でスティーブン・キング=安っぽい娯楽映画の原作者、というイメージが定着してしまったのだ。(もっとも「ランゴリアーズ」のストーリー自体はかなり面白かったけれど)

名作「グリーンマイル」はたしか映画館で観た。これは文句無く面白かった。映画館を出た後、すぐに家に帰るのがもったいなくて、ガールフレンドと2人、行くあても無く夜の街を歩いたような記憶がある。が、結局オカルト・ギミックかよ、という気分はまだあった。薄っぺらい6冊組の文庫本というのも気に入らなくて、読んでみようとは思わなかった。

そんな紆余曲折を経て、ようやく「スタンド・バイ・ミー」に辿りついたのだ。20数年間、これほど有名な作品に触れる機会が一度も無かったというのも考えてみれば珍しいことかもしれないけれど、ともかく先に小説を読んで、たまげた。キングとはこんな作家だったかと思った。一部の隙も無いピカピカの青春小説だ。カンペキだ。

つい先日映画の方を観て、またやられた。こちらもカンペキだ。当然原作とは細部が少しずつ異なっているのだけれど、その変え方1つ1つが実にスマートでいちいち納得させられる。そうだ、拳銃はゴーディが撃てば良い。エースの仕返しのエピソードなんか不要だ。クリスが弁護士になれたのも良かった。映画はこれで良い、いや、こうあるべきだ。小説と映画、それぞれがそれぞれのベストの方法で同じテーマを描ききり、結果的に原作と映画の両方が共に非の付け所の無い傑作に仕上がっている。こういう奇跡的なペアを、僕はこれから幾つ見つけられるだろうか?この新カテゴリを立てたのは、そんな興味もあってのことだった。

でも、もういいだろう。そんなことは本当はどうでも良くて、僕が今書きたいことは、こうだ。

つまりそう、僕にだってあったのだ。テントをかついで仲間とキャンプに行ったこと。友達が自転車で車の側面に突っ込んで、助手席側のドアがぐちゃぐちゃに潰れて、運転手が真っ白な顔で飛び出してきた。友達と自転車がほとんど無傷だったのが今思えば信じられない。ローティーンの少年はそれほど無敵なのだ。真夜中に何故か目が覚めてみんなで星を見たこと。少し歩けば国道にぶつかるような場所だったけれど、それでもびっくりするくらい星が沢山見えて、流れ星がスーッと流れて、ワルぶったあいつもすげえ、すげえと声を弾ませていた。竿を並べて川釣りをしたこと。見知らぬ婆さんがやってきて言った、ここの淵は深さが3メートルもあって、いったん沈んだら二度と浮かび上がれないよ、ちょっと前にも中学生が死んだんだよ、、、

そういう思い出が、ひょっとしたら人生で一番大切なものなんじゃないのかと、このところ頻繁に思う。「スタンド・バイ・ミー」を読み、映画を観た、それだけが原因ではないけれど、ここ最近の僕はそんな気分を少しもてあまし気味に過ごしている。だからダーリン、スタンド・バイ・ミー。

夜が来て あたりは真っ暗
僕らを照らすのは 月の明かりだけ
でも怖くなんかない 怖くないさ
君が僕の側にいるかぎりはね

そう だから僕の側にいてくれないか
僕の側にいてくれ

見上げた空が もし崩れ落ちても
あの山が もしも海に沈んだとしても
僕は泣かない 涙なんかこぼさない
君が僕の側にいるあいだはね

ねぇ だから僕の側にいてくれないか
僕の側にいてくれ


***

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by k_g_zamuza | 2007-01-06 19:02 | Book to Film


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